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戦火の果てに
結城白湯
戦いは終わった。
戦場に、もはや動く者はいない。
あるのはただ、戦いにて折れた剣や砕けた鎧、そして戦死者達の燃え尽きた骸だけだ。
俺はなんとか生きている。
生き延びた。
その事実にとりあえず安堵する。
だが五体満足では、無い。
剣を持って戦った利き腕が、戦によって受けた傷で動かない。
他にも全身のあちこちで、手傷を負った箇所が悲鳴を上げている。
このまま諦めてしまえば、どれほど楽であろうか。
ふとそのような思考が胸の内に湧きだした。
それに従い、俺の意識がゆっくりと、だが確実に現実から遠ざかっていく。
俺の心は死への恐怖よりも、永遠の安息へと身を委ねようとしていた。
それも、悪くない。
しかしその甘美な誘惑に反して、俺の体は戦の狂熱のまだ収まりきらない戦場から離れていく。
まるで俺の肉体はまだ戦えるとでも言いたげに。
まだ俺を死という至上の堕落へ任せるわけにはいかないとでも言うように。
無意味な殺戮の場でしかなかった戦場から離れてどれほど経っただろうか。
俺の意識も辛うじてこの世に繋ぎ止められていたようだ。
まだ、死んでいない。
しかし、俺は逃げられない。
たとえ今の戦場からは逃れることができたとしても、次の戦いがまた俺の行く手には待ち構えている。
今日も、明日も、明後日も。
そのたびに俺は血を流し、生と死の狭間で苦悶の声を上げる。
なんと理不尽な運命なのだろう。
この世に神はいないのか。
テストが終わった。
教場に、もはや動くものはいない。
あるのはただ、テストで折れたシャーペンの芯や消しゴムのカス、そしてミスった学生の死体(?)だけだ。
俺はなんとか単位は取れそうだ。
生き延びた。
その事実にとりあえず溜息一つ。
だが五体満足では、ない。
シャーペン持ってた左手がテストで書きすぎて死ぬほど痛い。
他にも全身のあちこちが、ずっと同じ姿勢でいたので筋肉痛だ。
疲れたし、このまま寝ちまいてぇ〜。
ふとそんな邪な考えが……あ、ヤバイ。
だんだん意識が、あっちの世界に……飛んで飛んで飛んで飛んで。
俺の意識はこのあとのテストのことより目の前の睡眠に完全に流れていた。
それも、悪くない、むしろそれでイイやハイ決定。
しかしその甘美な誘惑に反して、俺の体はまだ人の熱気がこもりっぱなしでクソ暑い教場から出ていた。
まるで俺の頭脳はいまだ知識を求めて飽きないとでも言いたげに。
まだ留年なんて甘くてニガーイ目は見させないぞと言うように。
教授の数少ない自己主張という無意味な行事の済んだ忌まわしの場から離れてどのくらい経ったか。
俺の虚弱貧弱無知無能な精神も現実逃避しないでいてくれたぜハニー。
まだやる気パルスもなんとか残っている。
しかも俺は逃げられない。
たとえ今日のテストが終わったところで、次のテストが俺の前には待ち構えている……そう、腐るほど。
今日の三限にも(ちなみに今一限終わったとこ)、明日にも、明後日にも。
そのたびに手ぇ痛いは体痛いは頭痛いは……しかも単位落ちた受かった気にしなきゃならんし。
なんと理不尽な運命なのだろう。
この世に神はいないのか! つーかやってられるかっちゅーねん!!
テスト中の大学生ってこんなモンだよなあ、やっぱり。
つーか本日の教訓
単位は取りましょう(泣) ばい結城白湯
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